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エコノミークラス症候群

エコノミークラス症候群
(旅行者血栓症)

長い時間旅客機などに乗ったときにまれに起こる症候群です。航空機のエコノミークラスでなくても、バス、自動車、列車、船の旅や、旅行以外でも長時間座っていれば起こりますので「旅行者血栓症」と呼ばれるようになりました。

この疾患は二つの病態が重なり合って起こります。
深部静脈血栓症と肺塞栓症です。

1)深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)
深部静脈血栓症は、航空機などで長時間同じ姿勢で座り続けた場合、下肢が圧迫されうっ血状態となることが原因となり、同部に血栓(血液のかたまり)ができる病態です。特に膝の裏側や鼠径部(太ももの付け根)の血行障害が問題となります。
下肢の静脈には浅在性の静脈と深部静脈がありますが、深部静脈は身体の隅々から血液が心臓に帰って行く道筋の本管となります。
血栓症を起こすと、前兆として、膝の裏側やふくらはぎなどに腫れや痛みを感じることがあります。

起こしやすい人;
下肢静脈瘤、下肢の手術やけが、悪性腫瘍、深部静脈血栓症の既往、凝固能異常、肥満、経口避妊薬(ピル)の使用、妊娠中、出産後。このような条件に当てはまる人は注意が必要です。また、糖尿病、高脂血症、高血圧症など生活習慣病の人もリスクが高いとされています。

2)肺塞栓症(はいそくせんしょう)
上記の病態で下肢の深部静脈に血栓が生じた場合、それが何らかの原因で血管壁から外れ、血液の流れに乗ってしまうと肺塞栓症が起きてしまいます。
血液の流れを考えてみますと、深部静脈の血液はまず大静脈に入ります。 そして、心臓の右心系(右心房→右心室)を通過し、心臓から肺動脈へと向かいます。さらに肺動脈系を経て肺毛細血管の手前の肺動脈に詰まってしまうことになります。このような病態が肺塞栓症と呼ばれるものです。
血栓が流れてしまって塞栓を起こすのは、立ち上がった時や歩いている時 が多いとされています。

症状は、突然の胸の痛みや呼吸困難などです。

旅行者血栓症で起きる肺塞栓症は、ふつう小範囲のものです。そのほかにも手術時や手術後などに起きる肺塞栓症もあります。この場合は塞栓部位が広範囲に及ぶこともあります。
小範囲の肺塞栓症の症状は、胸部苦悶感、胸痛、咳、血痰、頻脈、呼吸困難などですが、大きな血栓により肺動脈本幹が塞がれたような場合には、突然の心肺停止で発症することもあります。
旅行中であっても、後者の重篤な肺塞栓症が起きる可能性もありますので注意が必要です。
この病気は理学所見に乏しく、聴診器では分かりにくいとされています。
X線検査が可能な場合には、肺梗塞による楔状陰影、肺動脈の拡張や途絶などが見られることもあります。

■その他の呼吸困難を起こす疾患
突然の呼吸困難がおきた場合、その他の疾患として、気管支喘息、自然気胸、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性憎悪、急性間質性肺炎、気道異物、循環器疾患、過換気症候群なども考えられますが、航空機の中などでは、その鑑別診断は必ずしも容易ではないとされています。

■旅行者血栓症の予防
長時間座り続けるときの注意点

足の運動;
1時間に1度は足の運動を行い、足の血行を良くしましょう。
足全体の運動、足踏み運動、足首の運動、足指の運動などです。
ふくらはぎの軽いマッサージも有効です。

水分補給水分の補給;
ミネラルウォーターやイオン飲料をよく摂りましょう。
ただし、アルコールやコーヒーは控えましょう。お茶も控えめに。

■初期症状に注意
大腿から下の脚の発赤、腫張、痛みなどの症状に注意しましょう。
発作が起きるのは立ち上がったときが多いので注意しましょう。

*参考
病院で手術後などに起きる肺塞栓症の予防と治療

○機械的な予防;下肢の運動、早期離床、弾性ストッキングの使用、
(ストッキングは表在静脈を圧迫して、深部静脈の血流を増加させる)
下肢の間欠的圧迫装置

○薬剤による予防;抗凝固療法、抗血小板療法

○肺塞栓症の治療
酸素投与(フェイスマスク、気管挿管、人工呼吸)
血栓溶解薬;ウロキナーゼ、アルテプラーゼ
抗凝固療法;ヘパリン、ワーファリン、
気管支拡張薬;アミノフィリン、
肺血管拡張薬;塩酸パパべリン、
昇圧薬;ノルエピネフリン、
強心薬;ジギラノゲン(デスラノシド)
鎮静薬;塩酸モルヒネ、ジアゼパム、
手術療法

上記の治療は主に病院で行われるものであり、航空機やその他の乗り物内での治療は限られたものになってしまいます。
予防に努め、前兆がある場合には乗務員などに早めに相談いたしましょう。

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