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ライノウイルス(HRV;Human rhinovirus)

どこかで聞かれたことのある名前かもしれませんが、これは、かぜひきの原因のウイルスの一つです。かぜひき(普通感冒)の50%近くがこれによるものだといわれています。ライノ=リノは鼻という意味で「鼻かぜウイルス」ということになります。

このウイルスはピコルナウイルス科に属します。この科にはエンテロウイルス属、ライノウイルス属、ヘパトウイルス属など5つの属(genus)があります。
ピコルナのピコはラテン語語根で「小さい」、ルナはRNA遺伝子のことです。
小さなRNAウイルスという意味ですね。

33℃で増殖するので、春や秋のヒトの鼻の粘膜が絶好のインキュベータとなります。
(至適増殖温度33℃)
春や秋に保育園、幼稚園、学校、職場などではやります。
さらには新生児室のような場所でも流行することがありますから用心が必要です。
新生児に接触する大人は、鼻かぜといっても油断せず手指や顔面の消毒に努めなければなりません。マスクは逆に感染源になることが多いです。

ライノウイルスは酸に弱いので消化管経由では感染しません。感染経路は鼻や咽喉(のど)などの上気道からの飛沫感染や鼻水から手、口、鼻といった接触ルートで感染すると考えられています。

潜伏期は2,3日で、まず鼻かぜ症状、少し遅れて咳が出ることもあります。
年齢が高いほど免疫が少しずつできているために症状が軽く、小さいお子様ほど重くなるため注意が必要です。
ライノウイルスから二次感染(細菌感染)に進展し、咽頭炎、中耳炎、気管支炎、肺炎などを引き起こすこともあるので、抗生剤などで予防あるいは早期治療を行います。

例えばインフルエンザにも種類があるように、ライノウイルスにも100種類以上の血清型があります。獲得される免疫は血清型により少しずつ違うので、何回も何回もかぜ引きを繰り返すことになります。そして乳幼児から大人になるまでにだんだんとウイルスに強くなっていくわけです。6歳くらいまでにはある程度の免疫が完成し「月に1回程度のかぜ」ペースになるとされています。
1才台で保育園に入ると月に5回カゼを引くといわれています。
エンテロウイルスとライノウイルスだけで170種類あるといわれており、かぜウイルス総数で200とも400とも、さらにもっとあるとも言われています。

「かぜを引くのは仕方がないけど、こじらせないことが重要」だと思ってください。
当院では「カゼを引いた場合、カレンダーに○をつけてください」といつも言っています。
「一つ免疫ができた」という意味で◎ですね。

ライノウイルスはかぜの原因になるという以外にもう一つの顔を持っています。
気管支喘息や、COPD(慢性閉塞性肺疾患)を悪化させ、さらには肺炎球菌感染症を誘発するとされています。

ライノウイルスに直接効くお薬はなく、安静と保温と水分補給、さらに二次感染予防などを主眼に治療しますが、治療薬の模索もされています。
例えば、エリスロマイシン(マクロライド系抗生物質)は昔からある抗生剤ですが、抗菌作用以外に、ライノウイルス感染症の抑制作用があることが分かりました。
また、ステロイド剤やPPI(タケプロンなど)、またカルボシステイン(ムコダインなど)にも、エリスロマイシンと同様ライノウイルス抑制効果があることが分かってきました。

*参考;エリスロマイシンの作用
気管上皮細胞において炎症性サイトカイン、ライノウイルス受容体(ICAM-1)や酸性エンドゾームなどを減少させる。
ライノウイルスのmajor typeは接着分子ICAM-1を感染受容体とする。
あるいは酸性エンドゾームに取り込まれる。
minor typeはLDL受容体を感染受容体とする。

エリスロマイシンにはライノウイルス抑制効果とともに、気道上皮からのムチン放出抑制効果があるとされています。ムチンは喀痰の粘液成分です。
さらには難病である、びまん性汎細気管支炎(DPB)にエリスロマイシン長期少量投与が大きな効果を上げています。

このように、ごく普通のウイルスや薬剤の働きについての研究が、新たな呼吸器疾患治療への突破口となるのですね。

ライノウイルス以外にもさまざまなかぜウイルスがあります。
次の原稿で書かせていただきます。

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